kの備忘録

備忘録的な何かです

電解水を自作する

今回も某サイトに投稿した文章を再編集したものになります。

消毒用アルコールはまだまだ十分な流通量が確保されていない状況ですので…

こちらも何かのお役に立てれば幸いです。

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前回はアルコール精製に関しての記事でしたが、今回はもうひとつ話題の強力な消毒薬について書いてみましょう。
テレビ等でも時折名前を見かけるようになった「電解水」について、です。

各メディアで様々な尾ひれ付きで紹介されていますが、余計なノイズを取り払うと残る情報は概ね2種類になります。
電解の定義やら原理やらはこの際棚に上げて、単純にまとめていきましょう。

ひとつは「アルカリ性電解水
これが一番簡単に代替品が用意できるものとして流布されていますね。
一度は耳にしたことがあるんじゃないかと思いますが、いわゆる「薄めた漂白剤」のことです。
これは漂白剤の主成分である「次亜塩素酸ナトリウム」がアルカリ性電解水の能力に近しい効果を発揮することに由来しています。
さんざん紹介されていますし、作るのも「漂白剤を薄めろ」だけなので無理に字数を費やす必要はないでしょう。
なお、この「薄めた漂白剤」を高値で売り付けたりする詐欺が横行していますのでご注意を。
あれって薬液1本あたりの原材料費1円未満ですからね?

もうひとつが今回の本命「酸性電解水」です。
薄めた漂白剤との違いなどを語り始めると長くなるので、要点だけまとめます。

      希釈漂白剤    酸性電解水

性質    アルカリ性    酸性

消毒能力  それなり     超強力

手荒れ   要注意      平気

日持ち   10日程度     1日前後(延命手段あり)

作成    薄めるだけ    電気分解

能力としては、日持ちしない以外は薄めた漂白剤より遥かに高性能です。
あとは作るためのハードルを乗り越えるだけ!

用意する物は以下の通り。

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材料は前回同様、ホームセンターと100均で揃えました。
マンガンの単3電池2本と9V電池、素焼きの小さな植木鉢とその植木鉢が入る大きさの容器、赤黒に色分けされた配線コードと9V電池用アダプター、あとはシリコン補修材。
加工の道具として100均で売ってるニッパーとカッターナイフがあればいいでしょう。
ご予算1000円以内で揃います。


※ 以下は、本来電気配線の加工に必須のハンダ付け等の手順を省いた簡易作成法です。
「誰でも家庭で簡単に」をコンセプトにしましたので、強度が足らないため乱暴に扱うと千切れますが、そこらへんはご容赦ください。

マンガン乾電池をニッパーで分解して中の棒を取り出す
 アルカリ電池には棒が入っていませんので、必ずマンガン電池をご用意ください。
 分解手順は以下の画像を参考に。 

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※「電池の分解は難易度が高い」という方は100均で「2mmシャーペン」という太いシャーペンの芯を買ってきて使っても大丈夫です。
 ただし、非常に折れやすいので取り扱いは慎重に…

・配線をニッパーで適度な長さに切ってカッターナイフで皮を剥き、同じく皮を剥いたアダプター側の線とより合わせて繋ぐ
 この際、赤い線は赤い線同士、黒い線は黒い線同士で繋いでください。

・赤黒両方の配線の先端の皮を剥き、それぞれ棒に巻き付けて固定

・金属線が露出してる箇所にシリコン補修材を塗って乾かせば完成
 これらも同じく以下の画像を参考に。 

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※ 余った補修材で植木鉢の底の穴も塞いでおきましょう

 


さて、ここからは精製手順です。原材料はご家庭にある食塩と水道水のみ!
最初は精製できてるかの確認用にドラッグストアーでリトマス試験紙でも買って用意しておくと安心です。

・まず容器の中に塩水を入れ、植木鉢を沈める
 この時、植木鉢が完全に沈み切らず1㎝ほど水面に出るぐらいに塩水の量を調整してください。 

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 水に溶かす塩は少量で。塩が濃すぎると逆に電気分解の妨げになるみたいですので…
 私は1Lの水に対して小さじ半分程度の塩を溶かして作っています。

・炭素棒を半分ほど水につける
 この時、黒い線のほうを植木鉢の中に、赤い線のほうを植木鉢の外に、それぞれ分けて浸けてください。
 浸けた状態でクリップなどを使って棒の位置を固定しておくと面倒がなくて良いと思います。 

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・アダプターに電池をセットして放置
 浸した炭素棒から細かい泡が出てくればちゃんと電気分解が始まっています。 

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 時間は…一度に作る量にもよりますが、だいたい1~2時間程度放置してください。

・1~2時間後、電池を外し炭素棒を抜く
 この際、リトマス試験紙を植木鉢の中の水に浸すと青になります。 

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 逆に植木鉢の外にある水に浸すと赤になるはずです。 

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 上記の通り色が変われば電気分解は成功です。

確認できたら、

・中の水が混ざらないようにそっと植木鉢を持ち上げ、中の水ごと鉢を取り出す
 ちなみに植木鉢の中の水は迂闊に触ると手が荒れますからご注意を。
 この水はまた別の使い道があるんですが…どうせいくらでも作れますから気にせず捨ててしまっても構いません。
 また、使用した9V電池は1回こっきりの使い捨てと考えて同じく廃棄してください。
 無理に使い回すと途中で電池切れになり十分な電気分解が出来ない恐れがあります。

炭素棒と植木鉢を取り出し、最後に容器の中に残った水が「酸性電解水」です。
黒い粉が浮いてるかもしれませんが、炭素棒から分離した炭の粉ですので無害です。
気になる方はコーヒーフィルター等を使って漉し取るといいでしょう。


出来立ての電解水は人体や作物への悪影響を気にする必要が無いくせに農薬として使用できるほど強力な殺菌能力を有しています。
インフルやノロ、コロナはもちろん、現在大陸山間部で感染拡大しているペスト菌にすら殺菌効果を発揮するそうです。
ただそんな強力な電解水も、そのままの状態では日持ちが悪く非効率。
そこで簡単な延命方法の一例もご紹介。

方法は簡単。
「保存容器を真っ黒にして中に光を通さない」ようにするのです。
最もお手軽なのは、100均で黒いビニールテープを買ってきてスプレーボトルに巻き付けて全体を覆ってしまう方法です。
こんな感じに。 

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容器を黒くすることで遮光密閉状態を作り上げ、能力の低下を遅らせ日持ちを伸ばすことが出来ます。
それでも日を追うごとに能力は落ちていきますが、しっかり時間をかけて精製した電解水なら5日から1週間は必要十分な消毒力を維持できると思います。
万全を期すなら3日程の周期で新しいものを作り直すといいでしょう。
元は塩水、費用も安価。毎日新鮮なものと入れ替えるのもアリだと思います。

 

…と、電気の極性だのハンダ付けだのという理屈や手法を可能な限り省き、文章通りにすれば小学生でも出来るように組み上げてみましたが、いかがでしょうか?
おそらく最大のハードルは電池から炭素棒を取り出す工程ぐらいかと思うのですが…
「誰でも家庭で安価に作れる」ものを目指して試行錯誤した結果ですので、漂うやっつけ感には目を瞑って頂けると幸いです。

アルコール蒸留より圧倒的に低コストで、電池と塩と水だけでいくらでも作れる電解水…よかったら試してみてください。

 

※ 追記 ※

精製過程で「捨てて構わない」と書いた「植木鉢の中の水」ですが、これが本物の「アルカリ性電解水」です。
こいつも酸性電解水と同じく強力な殺菌能力を有していますが…同じ水から出来てるのに、酸性電解水と違って非常に不安定で取り扱いが面倒くさいのです。

薄めた漂白剤と同じく手すりやドアノブ等の殺菌消毒に使えばノロなどの脅威を排除できますし、消臭効果もあるとされています。
皮脂や油汚れなどを強力に分解するのでキッチン周りのお掃除にも重宝するかもしれません。
ただ持続時間が酸性電解水よりも短く、しかも上で紹介したような遮光密閉環境を用意しても日持ちを良くすることが出来ません。
最大能力を発揮する時間は…濃度にもよりますが1~2時間だと思ったほうがいいです。
その後もいつ有効殺菌能力が失われるか読めないので、我々素人には扱い辛いものになっています。
また、酸性電解水とは違って素手で触ると指の油が分解されてビックリするほど手が荒れたりとか…とにかく面倒なのです。
そのあたりの難易度を一気に下げるお手軽さから「薄めた漂白剤」が持て囃されているという側面もあります。
ともあれ一度電気分解できる環境さえ整えば無尽蔵に作れますから、こちらも使い捨て感覚で利用してみるのもアリかもしれません。

なお現在私の手元では、今回省いた極性やらハンダやらといったアレやコレやを経た結果、以下のようなブツに進化しております。 

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コンセントから電気を取るので電池は不要となり、同じく電池では出せない電圧電力を使って短時間で電解水を量産できる物へと進化しております。
家庭で使う分にはここまでの物は必要ありませんので、やりすぎた感がありますね。